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探究学習塾ナミカゼが開塾するまで

2017年と18年に「教育魅力化」の先進地である島根県の離島・海士町を視察しました。公営塾と呼ばれるおしゃれな建物で、高校生が活き活きとマイプロジェクトを進めている様子を目の当たりにします。私たちのような視察組の大人にも慣れっこで、話しかけても気さくに応えてくれます。魅力化コーディネーターと呼ばれる職のスタッフがいて、町長をはじめとする自治体ぐるみの体制もできていました。羨ましい。でも、これは数千人の島だからできることであって、6万人の気仙沼ではできない。悔しいかな、これが私たちの結論でした。

小さく始める

とは言え、まずは小さくやれることからやってみよう、と見様見真似でマイプロジェクトアワードというプレゼン大会を仲間のNPOと市と企画。17年、7名の高校生がエントリーしてくれて、一緒に夏合宿を行うところから始めました。高校生のサポートにかかる人件費は、各NPOが助成金や寄付金をかき集めて捻出していました。これではいずれ息切れするのは必至。持続的に高校生をサポートするには職業コーディネーターが欠かせない、という思いは捨てきれません。

高校が無理ならまず中学校はどうかと市教育委員会と協議を重ね、3年後、中学校の探究学習をサポートするコーディネーターが予算化。同時期に、生徒減少に伴い高校の在り方を検討する市の会議が発足し、末席に加えてもらいます。そこで、会議のアドバイザーである太田直樹さんにご尽力いただき、高校生向けのコーディネーター、公営塾、そしてそれらを支える体制(コンソーシアム)の必要性がアジェンダとして盛り込まれたのでした。少しずつ山が動きはじめます。

21年、コンソーシアムの準備チームが結成。教育委員会だけでなく、徐々に市長からも熱い視線が向けられ、展開は加速していきます。22年7月、ついに市長、教育長、4高校長、会頭をはじめとする「気仙沼学びの産官学コンソーシアム」が発足。まるオフィスは事務局(市教委)のサポートとして参画することになりました。

人生、ナミカゼ立てていこう

そして7月29日、気仙沼初の公営塾となる「探究学習塾ナミカゼ」が市の施設PIER7にてスタート、記念すべき1期生20名の高校生がエントリーしてくれました。「気仙沼が大好きだから探究したい」「気仙沼が嫌いだからまちの外とつながりたくて来た」「将来マスコミの仕事をしたくて」「LGBTQについて広めたい」「やりたいことがごちゃごちゃしてて」…十人十色の高校生です。これから一人ひとりのプロジェクトを企画し、探究していきます。コンセプトはひとつ「人生、ナミカゼ立てていこう」です。

当面、中学校コーディネーターがそのまま高校生もサポートする形をとります。まだ不足はあるものの、自治体ぐるみの体制があり、公営塾に職業コーディネーターがいる、という仕組みがこの日形になりました。最初の視察から5年半。この日の高校生はいつも以上に眩しく映るのでした。

(文・加藤拓馬)

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