まるゼミニュース
問いストーリーCAMP in 気仙沼 2024Summer 活動レポート
2024年8月4日〜6日の3日間、東日本大震災を経験した気仙沼出身の大学生と一緒に、能登半島の高校生を気仙沼に招待する「問いストーリーCAMP in 気仙沼」(以下、問いキャン)を開催しました。
まるオフィス インターン生・白鳥里桜(東京学芸大学3年)がレポートをお送りします。
「もし能登の高校生が気仙沼の復興の物語を見に来たら、何を感じるだろう?」
という問いがからはじまったこのプロジェクト。
リフレッシュしたい人は思いっきりリフレッシュし、探究したい人は思いっきり探究してもらう。事前にヒアリングを行い、高校生一人ひとりの希望に沿ったコ―ス設計にこだわりました。
気仙沼出身の大学生は、みな高校生時代に気仙沼でプロジェクトを起こし探究してきた学生です。能登半島地震発災後、「東日本大震災でたくさんの人から支援してもらった恩をつないでいきたい」「私たちだからこそ届けられるものがある」という想いで準備を進め、ようやく実現する機会になりました。
概 要
- 日 程:2024年8月4日(日)・5日(月)・6日(火)
- 場 所:宮城県気仙沼市各所(宿泊先:民宿「唐桑御殿つなかん」)
- 対 象:能登地域出身または能登地域の高校に通う高校生
- 参加者:高校生11名
- 参加費:無料 ※金沢駅からの交通費(新幹線代・貸切バス代)・気仙沼での宿泊費・保険代など全員共通のプログラム費は主催者が負担。
- 主 催:一般社団法人まるオフィス
- 運 営:まるオフィス 能登復興支援学生チーム(当日サポーター:気仙沼出身の大学生など9名・気仙沼の高校生2名)
引率サポーター:2名(協力:一般社団法人NOTORN・NRN能登復興ネットワーク) - 本事業は、Yahoo!基金「2024年度 能登半島地震 復旧・復興支援助成プログラム」の助成やいただいた寄付を活用して実施しました。
参加者11名の属性
- 高 校:七尾高校8名・輪島高校1名・小松明峰高校1名・鵬学園高校1名
- 学 年:3年生1名・2年生9名・1年生1名
- 住まい:七尾市2名・輪島市2名・かほく市2名・能登町1名・穴水町1名・羽咋市1名・金沢市1名・小松市1名(一部、避難先の住居)
DAY1 8月4日(日)
大学生たちが一ノ関駅で、七尾や輪島から新幹線でやって来た高校生11人をお出迎え。
一ノ関から気仙沼までは貸切バスで移動。バス車内では大学生がレクリエーション「気仙沼クイズ」を行い、高校生は大学生の勢いに圧倒!?これから始まるキャンプへの緊張や不安がほぐれていきました。
コース1-1.ゆったりコース
- 地元協力者:菅野一代さん(民宿 唐桑御殿つなかん)
- 概要:民宿唐桑御殿つなかん、鮪立湾でゆったり。
民宿×海の最高環境でフリータイム。さすが高校生。長旅後にも関わらず元気に海に飛び込んでいました。
コース1-2.まち知るコース
- 地元協力者:
菅原渉さん(株式会社菅原工業)・鈴木紗彩さん(東陵高校3年生)
小野寺憲一さん(気仙沼市震災復興・企画部) - 概要:気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザやまるオフィスインターン生シェアハウス「まるくわ荘」にて、まちで探究を重ね、復興を牽引してきた大人たちにお話を伺いました。
菅原さんは、東日本大震災をきっかけに気仙沼と向き合い、震災前のまちに戻すのではなくよりよいまちづくりを目指して、多文化共生に力を入れてきたと話してくださいました。
この日は「気仙沼みなとまつり」最終日。菅原さんは、気仙沼の高校生鈴木さんと一緒に環境問題を意識してもらえるよう工夫をしたフリーマーケットを行っていました。同じ高校生のチャレンジに興味津々でした。
続いて小野寺さんは、復興とは震災前になかった新しいものができる、まちの課題が解決される、新しいチャレンジが生まれる…など、まちが動いていることから生まれる未来への「わくわく」だと話してくださいました。
高校生からは
「震災後のまちづくりを市民とどのように進めてきたか」
「成果が出るまでに時間がかかるのに何を信じて進めてきたか」
「地方の課題に取り組みながら復興も行うには財政的な負担が大きい。能登はどうしたらいいか」
などの質問が上がりました。
2つのコースが合流。
気仙沼が一年で一番盛り上がる気仙沼みなとまつりを楽しみました。
海上打ち上げ花火と打ちばやし大競演に感動していました。
民宿「唐桑御殿つなかん」に着いてDAY1は終了。
今日一日でのまちとの出会い、人との出会いから興奮冷めやらず、なかなか寝付けない様子でした。
DAY2 8月5日(月)AM
大学生サポーターも一緒に宿泊しています。朝から大学生が「写真はこうやって写るのよ!」と伝授。ハイテンション。
高校生も笑顔でパシャリ。
コース2-1.海クルーズ漁師コース
- 地元協力者:小松博文さん(カネキ水産)
- 概要:船で鮪立湾から大島に移動、小松さん宅にて、震災後自然に立ち向かいホタテの養殖を再建したお話を伺いました。
初めて船に乗った高校生もいて、わくわくが表情に溢れていました。船上で生のホタテをいただくという港町ならではの体験。小松さん宅でホタテの焼き方も教わりました。
コース2-2.海SUP農家コース
- 地元協力者:三浦茂さん(専業農家)
- 概要:東日本大震災でボランティアとして唐桑に入った若者が今も通いつづける三浦さん宅。圧倒的な心地よさを感じながら全力で遊びました。
三浦さんの畑で誰が一番大きなキュウリを収穫できるか対決した後、海に飛び込んだり、SUPで遊んだり、シーカヤックで遊んだり思い思いに楽しみました。気仙沼の大人が、高校生と同じ…いやそれ以上に本気で遊んでる姿もまぶしかったです。
お昼も三浦さん宅でそうめんやじゃがバターなどご馳走になり、(エアコン無しでも)涼しい民家の中でお昼寝!まるでジブリの世界でした。
高校生からは「輪島の夏休みを思い出す!」「こんな夏休みをまた輪島で過ごしたい」といった声が聞かれました。
DAY2 8月5日(月)PM
コース3-1.探究 内湾/階上/大谷コース
- 地元協力者:
小野寺紀子さん(株式会社オノデラコーポレーション)
小山裕隆さん(コヤマ菓子店)
藤田純一さん(藤田商店)
三浦友幸さん(気仙沼市議会議員)
成宮崇史さん(認定NPO法人底上げ) - 概要:みしおね横丁、コヤマ菓子店、藤田商店、道の駅大谷海岸にて、気仙沼で震災後本気で探究してきた大人の方々を訪ね、高校生それぞれが探究のヒントをもらいました。
紀子さんは鶴亀の湯・鶴亀食堂とみしおね横丁が誕生した経緯について、「気仙沼の産業は漁師がいてこそ成り立つ、このまちにとって大切な漁師を支えていきたいという思いから始まった」と語ってくださいました。復興とは探究であり、仲間が三人いれば探究し続けられる、というメッセージに高校生は深く感動している様子でした。
小山さんは探究を行うにあたり、まずゴールを決め、そのゴールを達成するために何が必要か考えることが大切であり、ゴールが楽しいとみんな協力してくれると話してくださいました。商品開発を探究している高校生はアドバイスをいただきました。
こちらの高校生は、藤田さんからウニの陸上養殖や生産者と消費者の距離を縮める仕組みづくりなど、震災を機に様々な事業を立ち上げてきたというお話を伺いました。
実際に防潮堤を見ながら三浦議員からお話を伺った高校生もいます。彼は下調べをしてきており、市民との合意形成についてなどより濃いお話が展開されていました。またBRT(バス高速輸送システム)にも乗車しました。
その後、気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザにて合流、この2日間を振り返りどんな問いを見つけたか整理しました。
最後に登場した成宮さんは、震災ボランティアを機に移住した方。頑張っている大人の姿を見た高校生が「自分たちも何かしたい!」と話している様子に衝撃を受け、現在まで気仙沼の高校生の挑戦の伴走支援を行っています。能登の高校生に向けて、「自分のやりたいことをしていたら、それがいつか面白いまちづくりにつながる」と伝えてくださいました。
コース3-2.トランポリン&自然コース
- 地元協力者:藤田一平さん(トランポリンパークF-BOX)
- 概要:トランポリンパークF-BOXで遊んで、震災後地域課題の解決のため新しい事業に挑戦した方のお話を伺いました。その後、三陸のリアス海岸ならではの自然を感じたいという高校生の希望に応えて、唐桑半島の先端にある景勝地・御崎を歩きました。
思う存分飛び跳ねた後、藤田さんからトランポリンパークを立ち上げた経緯について、震災後小学校の校庭に仮設住宅が建てられたことによる子どもの運動不足に対して、自分に何ができるか考え、とにかくやってみたら行きついたと話してくださいました。高校生は藤田さんの挑戦する漢気に刺激を受けていました。
唐桑半島の御崎では日本海側で暮らす高校生が「太陽が海に沈まない」ことに驚いていました。
2つのコースが合流。
民宿唐桑御殿つなかんにて、BBQパーティーを行いました。
午前中にカネキさんから教わったホタテ焼きを披露する高校生やカツオ捌きに挑戦する高校生など、楽しそうに気仙沼の食材と格闘していました。
漁港で花火をしてDAY2終了。
やりたいことをやり尽くした一日となりました。
DAY3 8月6日(火)
- 地元協力者:菅野一代さん(民宿唐桑御殿つなかん)
- 概要:三日間お世話になったこの場所について女将の一代さんからお話を伺いました。
震災当時、自宅をボランティアとして訪れた若者が寝泊まりできる場所として貸し出したことをきっかけに、たくさんの人がつながって生まれた民宿。能登の高校生たちは一代さんのお話や笑顔にパワーをもらったと話していました。
気仙沼でたくさんの刺激を得て、問いとアクションを持ち帰るまでが問いキャンプ。
最後に気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザにて、この3日間を振り返りました。
高校生と大学生がペアになり、ポストイットに感想を書き出しながら、問いを立て、能登に帰ってからのアクションを考えました。
以下が高校生が付箋に書き出したキーワードです。
一ノ関駅までの貸切バスの車内で高校生たちが発表した問いとアクションの宣言はこちらです!
- 問い:避難訓練で中高生が高齢者を助けるためにはどうしたらよいか?
- アクション:高齢者の家がどこにあるか区長に聞き、ヘルプマップを作る。
- 問い:住民に自分の好きなまちをつくってもらうには、どのような意見交流の場が必要か?
- アクション:中高生と復興計画について話すワークショップを行うために、まず今回問いキャンプを共にした仲間と話し合ってみる。
- 問い:問いキャンプでの経験をどのようなかたちで能登に持ち帰るか?
- アクション:石川県の中高生を対象にしたオンライン交流会を計画しており、その場に能登以外の高校から最低で30人呼ぶ。
- 問い:震災の経験を通してどうやったら人に喜びを与えられる人になれるか?
- アクション:気仙沼の人のお話を聞いて元気をもらった。振り返ると皆さんは何でも全力でやっていた。自分も自分が好きなギターを全力でやる。
「今までで一番楽しい旅だった!」
「自分たちでも能登で問いキャンプを企画してみたい!」
「地元に対する見え方や意識が変わった!」
そう笑顔で言ってもらえたのが印象的でした。
以下、高校生たちのアンケート結果を紹介します。(誤字なども原文のまま掲載)
問1. 問いキャンのテーマでもある「リフレッシュ」はどれくらいできましたか?思いっきり遊んで、リフレッシュできましたか?(10点満点の評価とその理由)
- 10点:普段出来ない様々な体験を自然の中でとても楽しむことが出来たから。
- 8点:たくさんのスタッフさんや能登高校生と話せたから
- 10点:たくさん遊べた
- 10点:毎日3食とも美味しい食事を食べることができて、気仙沼の自然も堪能できたから。
- 8点
- 10点:海で沢山遊ぶことができたから。また、美味しいものを食べたり大学生やサポーターの方達と話せたりしたから。
- 7点:足を怪我してしまって、なかなかねれなかったから
- 9点:自然と触れ合えることができ、癒されたから。また、人と関わることでリラックスできたから。
- 10点:スマホを使うことを忘れるぐらいその時その時ですることを全力で楽しめたから
- 10点:とても新しい人との交流が面白かったから
問2. 問いキャンのテーマでもある「探究」はどれくらいできましたか?自分の問いを見つけて、思いっきり探究できましたか?(10点満点の評価とその理由)
- 9点:たくさんの方々のお話を聞いて、気仙沼の復興について知り、能登の復興のヒントを得たから。
- 6点:結局自分が今一番何をやりたいのかはわからなかったから
- 10点:僕たちと違う地域の話を聞けて、自分初めはそんな探求ができる気がせず、問いが生まれるかわからなかったけど、これからを変えるようなといができてよかったから。
- 10点:気仙沼の防潮堤について色んな人の話を聞いたり考えを深めたりしたところから、自分の新たな問いや将来について考えることができたから。
- 7点
- 10点:自分で周りの人達の力を借りて問いとアクションプランを立てることができたから。
- 10点:石川県に帰ってから探究活動についてすることが出来たから
- 8点:様々視点での物事の捉え方が分かり、新鮮だったから。また、新しい物事に挑戦している人のお話を聞くごとができ、いい刺激になったから。
- 8点:遊びながらも探究について考える時間が多くあり、今後の活動に活かせそうだった
- 8点:色々な人の辛い思いや復興に対しての努力が聞けたから
問3. あなたはこの問いキャンを友人や知人に薦める可能性は、どのくらいありますか?(10点満点の評価とその理由)
- 10点:初めは不安でしたが、大学生の方達やサポーターの方達が優しくてとても楽しく過ごすことができました。
- 8点:気仙沼で3日間過ごせてすごく楽しかったです!!沢山楽しんで学ぶことができました。輪島に帰ってからも探求を深めていきたいです!!沢山時間をかけて準備してくださった気仙沼のサポートのみなさん本当にありがとうございました。
- 10点:自分の問いが深まる最高のキャンプだった
- 10点:運営の皆さんのおかげで、自分の問いを深めたり気仙沼の自然を楽しむことができました。本当にありがとうございました。気仙沼は自然が綺麗で、食べ物が美味しくて、人が優しくてとても素敵なところだなと思いました。また遊びに行きたいです!
- 9 点
- 10点:受験とかが終わって行くことが出来るようになったらまた気仙沼に訪れたいなと思いました!
- 10点:楽しすぎてやばいから。
- 9点:このような貴重な機会に参加できとても嬉しく思います。この問いストーリーが始まるまで凄く緊張するとともに、どうなるんだろうとわくわくしてました。いざ始まってみると全てが楽しく緊張がほぐれリフレッシュすることができました。気仙沼の魅力を教えてもらう際に皆さんから気仙沼のことが大好きなのが伝わってきてとても温かい町だなと感じました。ホヤぼーやの事が大好きになりました。この問いストーリーで大事なことに沢山気づけ、沢山のことを経験できました。企画していただいたまるオフィスさんと能登復興支援学生チームさんにとても感謝しています。ありがとうございました。また絶対にきます!!
- 10点:まず、たくさんの企画をしてくれて楽しむことが出来ました。多くの人が関わってこのようなことが出来たと思うので感謝の気持ちを伝えていきたいです。
- 10点:とても楽しかったですまたあったらきます
最後に、事前準備からもしくは当日サポーターとして運営に携わった気仙沼出身の大学生や高校生の声(アンケート抜粋)を紹介します。
- 能登のために何かできることはないかずっと探していた。高校生からリフレッシュできたとの声が聞けて良かった。
- 高校時代に探究をして物事の見え方が変わり、意欲的になった。能登の高校生にも探究のワクワクを味わってもらえたと思う。
- 最前で復興に取り組んできた事業者さんや行政、漁師の方の生の声を聞くのは初めてで、地元でも知らなかった復興のリアルを知れました。
- 3.11を経験した大人が何かやってやろう!と立ち上がり出来上がった今の気仙沼は私の誇りで、そんな大人の皆さんが、私が尊敬する本気の大人たちだと気づくことができました!
- 気仙沼には震災を乗り越えた人や自分たちを応援し、支えてくれる人、何事にも全力な大人がいるということを伝えることができました。この交流が能登の高校生たちの前向きな考え方や問いの発見を後押しすると実感しました。また、問いキャンプは今回だけで完結するのではなく、今回来た能登の高校生が気仙沼で立てたアクションを実践し、それが実るまでサポートしていきたいと思います。
おしまい
(文:白鳥 里桜)