ちょこっと記事
唐桑の高校生と、新たな合宿の話
2月1日、仙台。気仙沼の高校生たちと高速バスに乗って「全国高校生 MY PROJECT AWARD 宮城サミット」にやって来ました(写真)。県内全67プロジェクト中、気仙沼からは11プロジェクト11名がエントリー。高校生たちがこの1年間、人によっては何年もかけて、立ち上げ探究してきたプロジェクトについて熱く発表し合います。気仙沼の高校生の特徴は2つあって、学校の授業からプライベートにはみ出している、つまり放課後や土日を使って地域に飛び出して活動していること、そしてグループではなく個で臨んでいること。だから、圧倒的に「自分の言葉」で語られます。私たちコーディネーターが伴走支援していることもありますが、過度にアドバイスしたり、手を加えたりすることはありません。いわゆる「壁打ち」相手になるくらいです。そして今年も1人、宮城代表として全国大会に進むことになりました。気仙沼からはなんと7年連続になります(レポート記事はこちら)。
地元から地球へ
代表に選ばれた彼女は気仙沼の唐桑地域出身です。唐桑小学校は牡蠣養殖の体験など特徴的な海洋教育に取り組んでいて、その影響もあり彼女は海や漁業に興味を持ちます。小学校での当時のプレゼンもよく覚えています。唐桑中学校では私たちコーディネーターと一緒にグループでまちづくりの活動にチャレンジ、まちの人にインタビューして回ったりしました。これらの経験から唐桑が大好きになったと振り返ります。一見とてもクールで、淡々と語ります。高校生になり、いよいよ個人で探究をはじめます。火がついたきっかけは「気仙沼学びの産官学コンソーシアム」が企画する未来アドベンチャーという企画で、東京ビッグサイトのスマートエネルギー展に一緒に行ったことでした。ここから彼女は、地元の夏祭りにソーラー発電を取り入れたり、地元企業と企画する古着を使ったCO2削減プロジェクトなどにのめり込んでいきます。そしてエネルギーについて究めるため、国立大学の自然エネルギー学科に進むことを決めました。地元のまちづくりを志したら、持続可能な社会や地球全体のエネルギーの循環に視座が上がっていく。少し離れたところから見てきた8年分くらいの彼女の活躍が、彼女自身の言葉で10分のプレゼンに凝縮されていて、走馬灯のようにめぐります。3月、彼女は進学のため気仙沼を巣立っていきました。
地元まるまる「学びの船」
この春、まるオフィスは設立10年を迎えます。気仙沼で取り組んできた活動に大きな手応えを感じています。上の彼女をはじめ若者たちが育つ仕掛けが定着しつつあります。上述のコンソーシアム事業をはじめ、2025年度も1,700万円ほどの市の行政委託費で中高生の探究を支援します。中高生だけではありません。小学生と地域を探検して思いっきり遊ぶ「放課後たんけん」も、市内の対象地域の拡大を目指しています。移住支援センターでも気仙沼の子育て・教育環境のアピールを継続しています。私たちNPOと自治体が一緒に取り組む気仙沼モデルと呼べるものが出来つつあります。地域をまるまる一艘の船に見立てて一枚の絵を描き「学びの船」と命名したこのモデル構想も2年目に入ります。
01ワークキャンプの始まり
2月17日、輪島。雪シーズンを避け、いよいよ今年最初の能登入りとなりました。大学生3人と町野(まちの)地区に着きました。3人とも気仙沼出身で高校時代からよく知った顔です。町野は9月の豪雨災害で二重被災した地区で、小中学校の前のレンガの歩道にはまだうっすら薄茶色の土がこびりついています。「3月に気仙沼から大学生と高校生を連れて、ボランティア合宿をしに来ます。何かできることはないですかね」町野のキーマンたちにアポをとり、尋ねて回ります。「宿も決まってないんです」「お風呂ってどこかありますか」こんな調子の私たちですが、現地の山下さんも柳田さんも快く相談に乗ってくれます。「災害ボランティアのニーズは下火になりつつあるけど、これからの復興に欠かせないのは若者の『関係人口』だからね」と言ってくれます。この「合宿」こそ私たちの次のチャレンジでした。
それから1ヶ月。当初5〜6人の合宿のつもりでしたが、大学生9名に加え高校生もなんと9名も応募してくれて合計18人の大所帯となりました。3.11の翌3月12日、東北から新幹線やバスを乗り継ぎ、輪島を目指します。「01(ゼロイチ)ワークキャンプ」と名付けた合宿の始まりです。なんにも無いところから新たに事業を起こすことを「0を1にする」略して「ゼロイチ」と言ったりします。大学生や高校生たちに、能登の復興まちづくりの現場に入って、議論だけじゃなく汗を流しながら作業することを通して、現地の人とゼロイチを経験してほしい。それは復興支援だけじゃなく、彼ら自身の学びにもつながるに違いない。それを「01ワーク」と呼ぶことにしました。彼ら18名は約1週間、集会所を借りて雑魚寝しながら、泥かき作業をしながら、自分たちの力で合宿をつくり上げていくことになります。中には、あの唐桑の高校生の姿もありました。活動レポートはこれからアップしていきます。「01ワークキャンプ」事業の今後も、お楽しみに!
(文・加藤拓馬)