ちょこっと記事

Special2x2Interview 唐中男子×若手漁師[前編]

文:加藤拓馬  写真:奥村浩毅

左から、
小野寺 庄一さん(おのでら・しょういち)
メカジキ突きん棒漁・メカブ養殖の若手漁師。
佐々木 壮登くん(ささき・まさと)
唐桑中学校2年生(当時)。
小野寺 凛くん(おのでら・りん)
唐桑中学校2年生(当時)。
畠山 政也さん(はたけやま・まさや)
牡蠣・ホタテ養殖の若手漁師。通称やっくん。


—— 将来漁師になりたい唐桑中学校の生徒2人と震災前後に漁師になった若手漁師2人が、唐桑の藤浜で会した。

漁師の後継者不足が叫ばれ始めて久しい唐桑では、
今や漁師を志す10代20代の地元の若者は皆無と言っても過言ではない。

そんな中、なぜこの唐中男子たちは漁師を目指し、
なぜこの若手漁師たちは漁師を続けるのか。
その胸の内にこそ、後継者不足を打開するヒントが眠っているような気がする。

「地域”協”育」をテーマにした「2×2インタビュー」が幕を開ける。

 
 
 
壮登(唐中) 漁師の一日ってどんな感じですか?

庄一(漁師) 今はメカブの養殖やってるんだけど、だいたい日の出とともに海に行きます。
漁師は朝早いってイメージでしょ?なんでかと言うと、朝はどうしても凪がいいから。
朝6時〜9時くらいまで凪がいい時間帯に仕事をしちゃう、という理由もある。

それでお昼過ぎくらいが出荷。午後は15時くらいに家に帰れるかな。
牡蠣の養殖は、出荷の時期となれば夜中から仕事だけどね。
マグロ船とかは、沖に出ると投縄するようだから…
ホント4時間くらいしか寝ないって聞いた。

朝早いのは辛い?

凛(唐中) 辛いです!

庄一 辛いよなぁ。だから早寝早起きするしかないんだよね。
でも、それがなかなかできないんだよな。

でも「自分で選んだ道!」って思って起きるしかない。

唐中生一同 お〜カッコいい。
 
 
 

 海が荒れてるときは、一日どんなことしてるんですか?

庄一 漁に出れない日は、道具を直したりするときもあるし、あとはー…遊んでるよね。

やっくん(漁師) シケてるときが漁師の休みだからね。

庄一 だからデートも難しいんだよ。
天気が悪いときにしか陸にいないので…例えば台風のときとか。

壮登 漁師はどうやって恋人つくるんですか?

やっくん いい質問だね。まずは「声をかけること」だね(笑)。

壮登 理想のデートはありますか?

やっくん 漁師は船っていう「武器」を持ってっからね(笑)。

庄一 ちなみに最近はいつ船走らせたんですか?(笑)

やっくん いや、ここ最近は(笑)。あくまで自分の中の世界の話。

庄一 妄想か!

 長い間海に出てると、そういう機会もあまりないんじゃないかなぁと思って。

やっくん 遠洋漁業とかだと、確かにそうだねぇ。
 
 
 

 漁師になるために、学校の成績って関係してくるんですか?

やっくん 漁師にもいろいろ種類があるんだけど、学校の成績は…良ければ良いよね(笑)。
船長とか航海士は資格が必要になってくる。
例えば海技士っていう資格。
その階級に伴って何トン以上の船長ができるのかが決まってくる。
だから勉強はできた方が、シビアな面を言うと給料とかに後々影響してくる。
例えば平の甲板員と船長では全然違う。

庄一 それくらい勉強して努力してるからね。

やっくん だから、大きい船に乗るなら(成績は)必要になってくるのかなと思うけど。
ただ、沿岸で自分で船やる分にはあんまり成績とか気にしなくていいと思います(笑)。

庄一 でも勉強はしてた方がいいよ!


 

お父さんに憧れて

庄一 ちなみに今の段階で、どんな漁師さんになりたいの?養殖とか魚獲りとか商船とか…

やっくん 商船は漁師じゃないっす(笑)。

 カジキとか獲る漁がしたいです。

壮登 自分は遠洋の方に。マグロとかカツオとか釣りたいなって。

 お父さんがいつも獲ってくるんで、自分も獲ってみたいなって憧れてて。

やっくん いいね。親父さんの背中に憧れるっていうのは。

 はい、乗ってる姿とか想像すると。

庄一&やっくん 息子にそう言われたら泣くよねぇ。

編集部 お二方はまず早く結婚してください(笑)。

やっくん 帰ってくると漁の話とか聞いたりするの?

 お父さんとは普段あんまりしゃべんないですけど、
おじいちゃんとお父さんの会話を聞いてると、すごいなぁって。
海であったこととか、乗組員との出来事とか、仕事の愚痴とかも…
(それを聞いて)海に出るのって怖いんだなぁって思いました。

庄一 みんな海に出ると人が変わるからねぇ。
近海船でも小っちゃい船でも結局「命」がかかってる仕事だからね。
魚の命を獲る一方、自分たちの命も関わってくるから。
なんで怖い環境だと知ってて、海に出たいの?

 お父さんは漁するときに仕切る方の立場なんですけど…
以前、停泊してる船に乗せてもらったときがあって…
こういうところでみんなを仕切れるってカッコいいなぁって。

庄一 じゃあやっぱ(資格のために)勉強するようだね。


 

物語は始まんない

 漁師って毎回いっぱい獲れる訳ではないと思うんですけど、
魚獲れないときって生活は苦しいんですか?

庄一 突きん棒漁にも行ってますが、獲れないときは本当に獲れない。
1ヶ月獲れないときもある。魚ってどこにいるか分かんないし。

でも、うちらは海に行かなきゃ仕事にならない。がんばらなきゃ。
獲れなくても、海に行かなきゃ物語は始まんない。
そういうときは苦しいよね。
でも、それも含めて漁師なのかもしれない。
サラリーマンと違って、仕事に行っても給料もらえるかどうか分かんない。
(その分)獲ったときはすんごいおもしろいし。

それが醍醐味っちゃ醍醐味なのかもね。

 漁師同士で話し合ったりするんですか?こういうやり方がよかったよ、とか。

やっくん 養殖は、家々で技術が違ったりするんだけど、
こうやった方がいいよ、とか浜同士の話し合いはあったりする。
唐桑がひとつになっていいものを作っていくっていう考えだから、
みんなで力を合わせてやっていこう!ってね。

庄一 自分のとこだけよくても、全体がよくなんないと、全体の値段も上がんないしね。
 
 
 

メカの刺身が好き

庄一 逆に漁師のイメージを聞いてみたい。

 海で魚を獲って、その獲った魚で家族を養って、
獲れなかったときも「次がんばる!」って思って…
家族のために力を尽くしている、というイメージがあります。

壮登 朝早くて大変だなぁって思うんですけど、
漁師がいないと自分もみんなも魚食べていけないし。
漁師じゃない人のことを考えると、漁師っていう存在は大切で。

やっくん なるほどねぇ…
第一次産業を担っている人がいるから、魚が食べれるわけだからね。

壮登 自分、魚食べるの好きで。食べられなくなるのはちょっと…

編集部 何が好き?

壮登 メカの刺身が好きです。

やっくん いいねぇ!「メカの刺身が好きだから、漁師になりたい」って。

庄一 そういうの大事だよなぁ!
俺もなんで漁師やりたいって思ったかっていうと、
やっぱ「海が好きだから」それしかない。
震災もあったけど、やっぱ海が好き。
 
 
 

—— 唐中男子の夢は、「父の背中が好き」「メカジキが好き」という極めて純粋な動機が芯となり、「家族のため」「社会(産業)のため」という公益性を帯びて日々成長していく。
とても心強い。

では一方、若手漁師の秘めた想い、描く将来は何か。対談は後半へ。

後編はこちら

聞き手:
加藤拓馬(KECKARAけっから。編集部)
伊藤夕妃(唐桑中学校)
吉田葵(唐桑中学校)

KECKARAけっから。編集部
※インタビューは、2016年2月のものです。

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