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「旅するSCH in気仙沼」を開催しました!

11月のとある週末、「旅するSCH」が気仙沼で開催されました!
SCH(Super Community High school)とは、地域と教育の未来を切り開いていく為、地域・学校・民間のセクターを超えた協働を推進するコミュニティ。東北芸術工科大学発祥のこのネットワークはいまや全国に拡がり、特にこの数年は西日本を中心に盛り上がりを見せています。今回は出張版SCHシンポジウム「旅するSCH」として、SCHの取り組みが数年ぶりに東北で開催されました!言わば“おかえりSCH”です。

今回の「旅するSCH in気仙沼」は、SCH西日本シンポジウムの開催地である広島県大崎上島で、教育×まちづくりを手掛ける 一社)まなびのみなと と、一社)まるオフィスによる共同開催です。

イベントにご参加したメンバーは広島から来た皆さんに加え、気仙沼の高校生、地域教育に関心のある大学生、気仙沼の中・高校の先生方、市外・県外で第3セクターとして地域教育事業に関わる皆さん…などなど、年代も地域も肩書きも異なるメンバーが同じ空間に集い、地域と教育の未来についてのディスカッションを行いました。

気仙沼の高校生の探究プロジェクト相談

第1部では、探究活動を行う気仙沼の高校生2名から、それぞれが取り組んでいるプロジェクトの紹介と、いま困っていること・相談したいことを話してもらいました。その後2つのチームに分かれ、2名の高校生を中心にディスカッションを行いました。

【1人目】 向洋高校2年生 小野寺瑞来さん

相談内容: 「気仙沼学びの産官学コンソーシアム」のプログラムにて豊洲市場を見学する機会があり、セリの現場にて切断されたマグロの尻尾が廃棄されていることを知った。この事をきっかけに、マグロの端材を活用した商品開発がしてみたいと考え、「ジョダリバーガー(ジョダリ=スワヒリ語でマグロという意味)」を考案し、試作と試食会を行った。今回は「ジョダリバーガー」の商品開発を通して、「誰に」「何を」届けたいのかを、今一度考えてみたい。

ディスカッションの時間では、「ジョダリバーガーという名前について、どうしてスワヒリ語を使ったんですか?」という質問から、話題は彼女の将来の話へと移っていきました。
実は、海外で起業したいという夢を持っている小野寺さんは、途上国の貧困問題や食糧問題に関心を持っているとのこと。今回考案したジョダリバーガーに込めたい想いと、彼女の海外の貧困問題に対する関心は、どこかで想いが繋がっているのではないだろうかと、会場の議論が白熱しました。

【2人目】東陵高校2年生 荒木みうなさん

相談内容:私は皆が世間一般に言う“普通”とは少し違った環境で育ってきた。そんな少し変わった自分の日常を漫画にしてSNSで発信している。この自身の探究活動にしっくりくる名前を付けたいが、この探究活動を通して自分が一番伝えたい想いを、どういった言葉で表現したら良いのか悩んでいる。今回のディスカッションの場では、自分の話を聞いた上で客観的な意見や率直に感じたことを言葉にして教えて欲しい。

ディスカッションの時間には、荒木さんの育ってきた環境に関連するエピソードや、その中で受けてきた周りのサポートの話、彼女自身のポジティブな考え方などに焦点が当たった話が展開されていきました。

「人と比べて苦労が多い人生かもしれないけど、発信している内容に対して同情してほしいわけではない」、「むしろ、可哀そうだねって思ってほしくないからこそ、ポジティブでカジュアルな表現で発信している」など、様々な言葉が出てくる中、“同情よりも笑ってほしい”という1つのキーワードが浮かび上がってきていました。

地域×教育を手掛けるプレイヤー同士の情報交換

1部では高校生を中心としたディスカッションを行い、会場の雰囲気が温まったあと、「いま地域に必要とされているのは、こうした“学生が地域の大人に相談できる場”なのではないでしょうか?」という導入から、第2部がスタートしました。

2部では、地域×教育(学校)の作り手として活動する3名から、それぞれの事例紹介がはじまりました。

■広島県大崎上島町の事例(一般社団法人まなびのみなと 笠井礼志)
橋のかかっていない離島である大崎上島は、人口7000人のうち小・中・高・高専生を含めた学生数が1000人近くに上るという、「教育の島」を謳う町。島内の高校が統廃合の危機に面したことをきっかけに高校魅力化の取り組みが始まる。様々な地域教育の取り組みを行ってきた中で、子ども達の地域でチャレンジする姿が大人の心にも火をつけはじめ、大人の中でも様々なチャレンジが起こり始めた。近年は大人も巻き込んだ学びの機会づくりに展開中。

■宮城県気仙沼市の事例 (一般社団法人まるオフィス 加藤拓馬)
気仙沼市では、学校・行政・産業界が協働して子ども達の学びを支えていくための「気仙沼学びの産官学コンソーシアム」が2022年7月より立ち上がっている。高校生と地元企業が東京の展示会視察に行く企画や、地域企業でのインターンシップ企画、リベラルアーツの講演会の開催、探究学習塾などを展開中。コンソーシアムの取り組みとは別に、中学生の探究活動にも力を入れており、中学から高校への探究活動の接続が見え始めている。

■全国の地域教育の現在地(一般社団法人まなびのみなと 取釜宏行)
県立高校魅力化アドバイザー、広島県生涯学習審議会委員、文部科学省CSマイスター等、「高校」×「地域」を中心に幅広く活動を行う取釜宏行氏より、学校と地域の連携における全国の傾向や事例紹介が行われた。学校と地域の連携においては、地域の中でも特に“産業界との接続”がキーワードになってきている傾向がある。また特に新たな動きとしては、連携組織を立ち上げて地域教育事業を行う事例も出てきており、組織を立てることで協働が推進しやすいことが分かってきている。

テーマごとのディスカッション

3者の話を聞いた上で、今日のこの場で、このメンバーで話し合いたい議題について、参加者全員でテーマ出しを行いました。

数あるテーマをカテゴリー別に振り分けていった結果、「学びの循環」「探究の質向上」「気仙沼深堀」の3つのテーマに分かれてグループディスカッションを行うことに。

どのグループもそれぞれ盛り上がりを見せていたディスカッションタイムでしたが、中でも特に印象に残ったお話を1つご紹介したいと思います。

「探究学習のサポートは、知識を“教える”教育と比べると、一見手間がかかるように感じるかもしれませんが、探究学習を通して“学び方を学んだ”子どもたちは、プロジェクトを自走できようになる(=自分の力で事を起こしていくことが出来る)スピードがとにかく早いんです。生徒1人ひとりの個別伴走を、学校の教員だけで対応していくことは難しいことですが、そういう時こそ地域や民間のコーディネーターの力を借りて連携していくことが大切です」 (学校教員)

高校生の視点から見た、探究学習や地域に出て活動することの面白さや悩みごと。
学校の先生方が感じている、学校としての探究学習サポートや、地域との連携の仕方。
地域側で学びを支えるコーディネーター陣が思い描いている、地域教育の未来。

今回の「旅するSCH in気仙沼」は、高校生、教員、コーディネーターなど、さまざまなセクターの入り交ざった、ごちゃまぜのディスカッションの場がなんとも面白く、“新しいものが生み出されそうなワクワク”を感じることのできる、非常に豊かな場となりました。

組織や年齢や地域は違えど、“地域と教育の明るい未来を創っていきたい”という、同じ意志を持つ仲間として、ぜひ今後も緩やかに繋がり続けていけたらと思います。
ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

(文・そのか)

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