ちょこっと記事

坂の上のもや

10代が「夢中」を見つけられる社会

 この日本では、だれもが一度は10代のうちに「夢中」を経験しています。何かに取りつかれたように、自分の中から湧きあがる意志につき動かされ、行動し、探究しちゃうことです。学校を飛び出して地元を歩きまわったり、いろんな地域や国を飛びまわったりします。「夢中」を経験することで、将来の選択肢を広げ、わくわくしながら何度でも選びとれるようになります。自ら命を断つ小中高生はいなくなり、世界に貢献しようとどーんっと大きな夢を語る若者があちこちにあらわれました。
 地方では、災害や仕組みの老朽化によって閉じる道を選ぶ自治体が出てきました。一方、10代の「夢中」を仕掛ける地域には絶えず人が出たり入ったりして、新しい企てがいつも起きていて、こういう元気な地域も津々浦々に広がっています。 令和17年5月30日

 
 上は、今年のまるオフィスの総会に合わせてまとめた新スローガン、そして「10年後からの手紙」です。まるオフィスは10周年を迎えました。10年前の2015年平成27年の5月30日に第1回の総会を開いていたようなので、この日を設立記念日にしました。この10年は右往左往しながらがむしゃらに突き進んで来ました。なんとなく山脈の方を指差して「あの山々を登るんだ」と方角だけは決めていたように思います。ただ具体的にどの山をどうやって登るのか、そんなものは決まっておらず、すぐそばに先人たちが拓いてくれた道があるのに草をかきわけながら進む、そんな高慢で青く幼いスタートでした。10年かけて「社会教育」というテーマに出会い、「持続可能なまち」について哲学して、登る山を定め、ようやく五合目までやってきました。この山をあと10年で登るんだという気概を込めて、10年後の日本の様子を言葉にしてみたのです。

変わり続ける景色

 気仙沼において官民連携で進めてきた教育事業はずいぶん成熟してきました。学校の外の地域での学びの機会を「社会教育」と呼びますが、まるオフィスはその社会教育のプロ集団として、高校生、中学生、小学生それぞれを対象に事業を展開しています。放課後に有志の子どもたちを集めて地域をめぐり歩いたり、地元の企業に連れて行ったり、好きなことをとことん探究できる時間をつくったり、大阪万博に連れて行ったり、マサチューセッツ工科大学の学生と車座をつくったり…(トップ写真)。それぞれ学校と連携できているおかげで、参加者はどのプログラムも年々増えてきました。高校生の放課後探究クラブ「ナミカゼ」を例に挙げると、2年前まで各回の参加者は平均7人でしたが、今年度は30人近い有志の高校生が毎回やってくるようになりました。30人と言えば1クラスに相当します。平日夜、スクエアシップという学外のシェアスペースに集まってきて、一人ひとりの探究テーマについてわいわい楽しそうに語り合い、うんうん唸りながら考えています。ここ数年でなんだか景色が変わった、そう感じます。

 
 一方、能登で始めた「ワークキャンプ事業」はまだまだ産まれたての状態です。この度「サントリー“君は未知数”基金 2025」の助成団体に採択されました。10代の「夢中」を生み出す一つの要因に「越境」があると考えています。気仙沼の高校生だけではなく、リアルな現場を求めている10代の若者は日本中にいます、きっと。そして、若者の力を求めている現場も日本中にあります。特に地方に。被災地支援にとどまらず、10代が背伸びして越境して、かきまざって、自分以外の誰かのために汗をかくような体験の仕掛けをあちこちではじめていきたいです。五合目だとか言いましたが、山頂にはまだもやがかかっているので、これからも気楽に「まぁ、なんとかなる」精神で坂を駆け上がっていきます。

(文・加藤拓馬)

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