ちょこっと記事

学校現場に2週間通ったら見つかったこと

ヒントは必ず現場にある

気仙沼のある中学校に2週間通いました。朝から夕方まで。職員室に置いてもらって職場見学です。

毎朝、開通したばかりの気仙沼湾横断橋を渡ります。橋も含めて「復興道路」と呼ばれる三陸道です。この2週間、ルーティンのBGMが誕生しまして。

浦島のトンネルを抜けて、橋に差し掛かる瞬間。大島の緑と海の青緑、空の水色、白い尾を引く漁船と雲、深緑の山を背に所狭しと並ぶ気仙沼の市街地が右から左から目に飛び込んできます。その瞬間がサビに入るタイミングと被ったらもう鳥肌が立ちます。「よし、今日一日を丁寧に楽しもう」と思えます。そんな通勤路を唐桑半島から約30分走ると、その中学校にたどり着きます。

この学校現場見学もとい「学校現場探究」と呼んでいます、の受け入れをお願いしようと思い至った理由はシンプルです。震災から10年かけて辿り着いた今の事業に何の不満もありませんが、だからと言ってこのままキープしてちゃ突破できない壁を感じたからです。

気仙沼の小中学校に入って主に総合学習で「探究的な学び」を展開するコーディネートをする、という事業を20年度に市と始めたんですが、有り難いことに21年度関わる学校が爆増しました。さらに私個人が挑戦したい教育×◯◯がある。そのためには、今のやり方からぽんっとジャンプする、非連続的な進化が必要だったんです。

そのヒントは必ず「現場」にあります。これは私の信条のひとつです。

「現場であるもの探しができる」これはその現場の当事者には意外と難しいものです。これはヨソモノの最大の強みであることは私自身、震災後に移住者として実証済みです。まちの人にとっての「当たり前」が「当たり前」じゃないですから。「学校現場」に関してまだまだヨソモノの私です。それを活かすのです。

市の探究学習コーディネーターとして受け入れてくださり、計9日間学校にいました。うち7日間いただいた給食たちです。毎日の楽しみでした。1食345円です。

まだ期間を終えたばかりなので、速報的な所感になりますが、いくつか気づいた点を列挙していこうと思います。

先生にリスペクト

9日間の間、じっと見てたのはまず先生の職員室での様子、そして先生の授業の進め方です。なので残念ながら生徒との交流は薄かったです。その分、先生たちとはお話することができました。本当に有り難いことに、授業は好きなタイミングで好きなだけ見学させてもらうことができました。

1日目が終わってまずメモに残した言葉は「先生リスペクト」でした。一日中文字通り朝から晩まで、職員室で生徒の話をしています。先生どうしで授業での気づきや生徒指導について情報を交換し、どう対応すればいいか、どう後押ししてあげればいいか、話し合っているのです。若い先生がベテランの先生に相談する様子も多々見られました。探究学習コーディネーター(私)がとやかく言わずとも、先生たちは探究しているのです。

そんなの当たり前じゃん、と思う人もいるかもしれません。

確かに、受益者つまりお客さまのことを個々のケースで議論してサービス向上に努める企業は世の中にいくつもあると思いますが、それだけでなく同じ屋根の下で受益者と終日過ごすわけです。朝8時15分の朝学習から、お昼になるとエプロンを着て昼食も一緒、16時の帰りの会終了後は着替えて18時を過ぎるまで野外でスポーツ。ずっと約100名の受益者と時間をともにします。これは思ってる以上に特殊な職場かもしれない。そう感じました。

ゆえに「やりがい」を感じやすく、一方で働きすぎや「やりがい搾取」に留意しなければいけない現場なのか。だって、生徒たちがそこにいますから。がんばれちゃうのかもしれません。それが最初の気づきでした。

学校って贅沢なコンテンツ

2つ目の気づきは学校というコンテンツがいかに充実しているかです。よく言えば充実、悪く言えば忙しい、慌ただしい。

50分ごとにジャンルが全く異なるテーマのインプットがあって、間の休憩時間は10分。しかもその10分でジャージに着替えたり、教材を準備して教室を移動したりします。理科室で酸化銅を還元する実験をしてると思えば、美術室で自画像を描いてるし、気づけば教室に戻ってルート(平方根)の割り算してるし、次は英語のテスト受けてる。なんちゅうコンテンツ力。それを4周すると、もう12時半をまわります。

社会人のように昼休憩も1時間なんてありません。歯磨き用の水をコップに汲んで、給食の準備をしてさっと食べて、昼休憩は20分あるんですが、予鈴が5分前に鳴ってみんな着席するので昼休憩は実質15分。

午後の部2時間分が終わった瞬間に椅子をひっくり返して、年末の大掃除かっていうくらいみんなで校舎のあちこちを清掃して、今日のフィードバック(帰りの会)。あっと言う間に放課後です。

生徒たちもみんな結構テキパキ動くんですよね。オフィスもなく、ふらふらいろんなところで仕事してる私にとっては感動です。そういえばこんな時間の流れ方をしてたな、と思い出されます。人によって合う合わないいろいろあると思いますが、いずれにせよ贅沢なコンテンツであることは事実だと思います。

ひろゆき氏がこんなことを話してたのを思い出しました。

中学校だと、1日5時間ぐらいの授業っていうのを学校の先生というのがやってくれて、社会科だと社会のエキスパートとして一応その社会科専用の教職免許を取った人が教えてくれて、英語の授業だと英語の教職免許を取った人が教えてくれてっていう、専門の人が5時間教えてくれるっていう環境なんですけど。それを自前でお金払って雇おうとすると、結構高いと思うんですよね。1時間安く雇えても2000円じゃ利かないと思うんで、そうすると1日1万円くらいでだいたい毎月20万円以上その先生を雇うのにかかって、さらにその教科書だったりとか、学習用の資料だったりとか、例えばその視聴覚室で観る映像だったりとか…じゃあ運動とかになると今度体育館みたいなところが(学校外だと)ないじゃないですか。実は学校ってすげーお金がかかってるんですけど、それを税金で払ってくれているので、タダで受けられるっていう、すごいお得な状況なんですよね

(YouTubeチャンネル「ひろゆき, hiroyuki」https://youtu.be/qUJP359ho3k?t=1156 より)

授業はワークショップだ

私はこれまでいろんなところでワークショップを開いてきて、それが仕事みたいなもんです。そのワークショップ屋から見ると、学校の授業って一つひとつが50分間のワークショップなんだ、と気づきます。講師兼ファシリテーター役の学校教員が、講義をしたり、話し合わせたり、映像を見せたり、いろんな工夫をしながら場を創っていきます。

有名な風神雷神図がありますよね。風神と雷神を見比べて、共通点・相違点をタブレットに書き出しましょうという美術の授業。目を閉じて身の周りの音に耳をすませる音楽の授業。4教科(音楽・美術・技術家庭・保健体育)や理科の実験などは特に、五感を使ったワークに溢れています。

おもしろいなぁと思った例は他にもあります。国語の授業です。生徒たちが事前にタブレットに打ち込んだ小説の感想をもとにグループワークを始めます。ミニホワイトボードを用意して、4人1組で机を寄せ合いディスカッションを行い、最後はそのホワイトボードをタブレットでカシャッと撮って、全員の画面に一覧表示させて(zoomのギャラリービューのように並びます)共有します。次の時間は、それを元に自分個人の考えにさらに落とし込んでいくのです。それを記入した紙もまたタブレットで撮って提出。

普段私たちもワークショップを行うときは、グループワークや個人ワークを行き来しながら、ホワイトボードで議論を可視化し、共有します。この授業ではタブレットとアプリを駆使して、さらにスムーズにやってのけるのです。

教科によってはインプットが多く、対話的なワークに割く時間が足りない、というのも事実でしょう。ただいずれにせよ、講義を聞くインプット(吸収)の時間と、みんなでわいわい対話するアウトプット(発散)の時間のメリハリをつけることが、主体的な参加意識を醸成するために大切です。

なるほど、学びを探究的にしていこうという時代の流れは、授業というものを一斉講義型からワークショップ型に変えていこう、とも読み取れるのかも。ここらへんは、今後また記事にしたいと思います。

学校の当たり前を疑ってみる

ヨソモノとして学校の当たり前を疑ってみた9日間でした。上で書いた「先生という仕事」「学校というコンテンツ」以外にもたくさん驚きと疑問が出てきました。

給食って魚と野菜が多くて健康的!

宿題って何のために出すんだっけ?

動画で授業を見せちゃえば?もしくは反転学習はダメ?

校務でもICTをどんどん使ってる!でもソフトやフォーマットはバラバラなんだ

まだまだありますので、現在消化不良ですね。せっかくいただけた貴重な気づきです。私自身の探究テーマとしてこれから取り組んでいきます。本当に、学校の皆さんありがとうございました。

多様で稀有な世界、公立中学校

最終日の帰りの会で、3年生に話したことです。

「中学校って多様性に溢れてると感じました。クラスの中には本当にいろんな人がいるなぁと。高校以降は受験とかである程度同じカテゴリーの人たちが集められるのがこの社会です」
大学も、会社も、なんなら家庭も。範囲は広がっていくけど、いや範囲が広がっていくからこそ、同質の人たちでつるむようになります。

「みんなの共通点は何でしょう?この地区に生まれたもしくは引っ越してきて住んでる、というだけで、ここで毎日一緒に過ごしてるんです」
もちろん地区によってはお金持ちが多い、貧乏が多い、なんてこともありますが、公立中学校は多様な能力を持った人たちが地縁に基づいて集められる稀有なコミュニティです。
「だからぜひ、いろんな人がいて、いろんな考え方があることを楽しんでくださいね」

「一方で、その閉鎖性から窮屈や生きづらさを感じる人もいるでしょう。でも安心してください。これからどんどんあなたの世界は広がっていきます。そして、探究学習はその世界を広げていくためのお手伝いだと思っています。そのお手伝いをこれからもしていきますね」

(文・たくま)

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