ちょこっと記事

中学生の職場体験をアップデートする

知らぬが仏

中学校の総合学習の目玉コンテンツのひとつ、職場体験。地域の企業に2〜3日間入り込んで現場でお仕事を体験、はたらくとは?自分は将来何をしたい?と問うキャリア教育の最も代表的なプログラムです。

気仙沼では多くの中学校が2学年で職場体験を実施するのですが、僭越ながら私コロナ禍をきっかけに「職場体験に何とかメスを入れたい」と考えるようになりました。なんででしょう。

何年も中学校の総合学習を地域とつなぐ役割を担ってきましたが、職場体験はノータッチのカリキュラムでした。既存の体験先リストが各校あったからだと思います。しかしコロナ禍で体験受け入れが難しくなった企業(特にサービス業)が続出、結果学校から相談が来はじめます。

コロナ前からもともと商工会議所青年部の若手経営者と中学校を回って出前授業もやっていたので、青年部の皆さんにおつなぎしながら、まるオフィスも一企業として中学生の体験を受け入れはじめました。

余談ですが、まるオフィスの職場体験は「企画する」を体験してもらいます。弊社の事業である教育や移住支援をテーマに、イチから中学生が考えてつくった記事や動画はこちら(一部)です。

https://maru-office.com/2021/10/column_42/

職場体験っておもしろいな。受け入れ方の工夫次第で、学びが深まるぞ。職場体験の受け入れについて商工会議所青年部にも事後アンケートをとってヒアリングします。すると、好例や課題が浮き彫りになってきます。

知らぬが仏。知ってしまうと気になり出すタチです。「もっと職場体験を探究的にできないだろうか」と気になりはじめます。

もちろん体験だけでも大いに価値はあります。でも、2,3日間まるまる+前後も合わせると総合学習20時間くらいゆうに使うからには、もっと自ら問う、対話する、探究する場面を増やせないだろうか。

悪例はこうです。学校でマナー研修をして、職場に行って、指示されたことを礼儀正しくしっかりこなして、職場体験終了。指示されたことをこなす=はたらくと理解。学校に帰ってきて、それを壁新聞にまとめて、文化祭に貼り出す。今はコロナ禍で文化祭も縮小傾向、それが地域に還元されるワケでもありません。企業に対してもお礼の手紙以外特に生徒からはフィードバックがない状態。お互い何の学びにつながったのか、さっぱり。

これでは「はたらくを学ぶ・学び合う」ことにはつながりません。これからのVUCA時代「はたらく」ってもっとクリエイティブになるからです。

プロジェクト型職場体験

企画書を書いて持っていったのが、ちょうど相談があった階上中学校でした。タイトルは「プロジェクト型職場体験」。

プロジェクト型職場体験では「その企業・サービスを表現・PRするメディアをつくれ」というミッションがまず中学生に出され、それに取り組むため生徒たちが現場に「体験と取材」に行く、という構成になっています。大学生の「実践型インターンシップ」を参考にしています。階上中の先生に了承をいただき協働がスタート。地元の企業にもお願いして回って、5社にこのプロジェクト型で受け入れてもらえることになりました。

通常の職場体験と異なり「体験してまとめる」ことがゴールではありませんので、生徒たちは事前に入念に準備が必要です。

どんなメディアにしようか。ウチの班はポスターにしよう、ウチはCMにしよう。世の中にはどんなポスターがあるのかタブレットで調べよう。これは誰に見せるためのものだろう。じゃあどんなことを聞き出す必要がある?取材の練習をしよう。

事前授業から私たちコーディネーターがサポートに入ります。ちなみに、取材のコツはこちらを視聴して参考にします。

インタビューのしかた | アクティブ10 プロのプロセス | NHK for School
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/bangumi.cgi?das_id=D0005180395_00000

大切なことは、職場で「指示される・受ける」の関係じゃなく、「問う・問われる」の関係を築くことです。

企業側にも事前に伝えます。この班は御社のCMをつくりたいみたいなんで、いろいろ聞いてくると思います。誰に向けて、どんなCMがあるといいのか、伴走してあげてください、と。

当日の職場体験を経て、後日学校にまとめの作業を見に行きました。「成果物が楽しみです」と先生もわくわくしてくれてます。

そして完成したプロジェクト型職場体験の成果物がこちらです。

株式会社菅原工業

有限会社ムラカミ

有限会社藤田製凾店

株式会社カネダイ

一般社団法人まるオフィス

※1人1作品

中学生クオリティはいかがでしょう。各社には学校からデータとプリントしたものをお渡ししました。「公開できるデータ」というのが嬉しいところです。会社のSNSで拡散できます。ポスターを社内に貼ってくださった会社も。

課題もまだまだあります。カリキュラムの構成や、事前事後のフォロー、成果物制作のアプリなどももっと整備できます。今後も改善していきたいです。

職場体験をアップデートする、は始まったばかりです。

(文・加藤拓馬)

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