ちょこっと記事
高校生マイプロ2023が感動的だったワケ
2023年12月3日、気仙沼でプロジェクトを起こし探究してきた高校生のプレゼン大会「気仙沼の高校生MY PROJECT AWARD 2023」が開催された。2017年より毎年企画してきたが、AWARDとして市長賞を一人選ぶことの意味が初めて分からなくなった。というくらい感動的だった。7年経って見えた到達点が、企画としての自己否定だった。
考えられる理由は2つ。今年エントリーして登壇した12名の高校生が、全員「自分ゴト」として語っていたこと。「気仙沼学びの産官学コンソーシアム」の事業が2年目に入り、探究学習塾ナミカゼの設立や東京の展示会に見学に行く越境的な学びの機会が効いてきた。自身の障がいについて語る高校生、マグロの端材のロスについて、不登校経験について…どれも内側から湧き出て普遍的に展開できるイシューだった。
もう1つ。12名の高校生が全員「真に探究的」だったから。おおげさな、と思うかもしれない。そもそも探究的な学びとは、①問いを立て②仮説を立て③検証することで①さらに問いを立てる…というサイクルをくるくる回すプロセスを指す。過去の大会では、高2の夏にはじめておよそ半年間に渡る探究プロセスをこの年末のAWARDで発表する、というパターンが多かった。半年間だと、問いを立て、仮説を立て、いったん検証まで至ればいい方だった。それでも十分すばらしかった。ただ、今年は違った。
2020年度からはじめた中学生の探究学習支援事業が実り始めたのか、12名中7名が中学生のころからよく知っていて、彼らの多くは「中学のころの探究が楽しかったから」と高校進学後も活動を続けている。中学のころ海の酸性化について問いを立て実験していたしんぺいは、現在牡蠣殻の活用について実験中。中学のころ海外の技能実習生の防災について問いを立て奔走したあいゆは、現在実習生と地域の中学生の交流企画を実施。同じく観光まちづくりに惹かれたさあやは、現在はクリーンエネルギーによるまちづくりを実証中。いずれも探究サイクルが2周以上回っている。
つまりヤボってこと
サイクル1周目を愛すべき「なんちゃって探究」と呼ぶなら、なんちゃって探究の成果は「え、探究って楽しい!」と探究心に火が着くことだ。結果、「私はこんな活動をやりました!」と完了形のプレゼンになることが多い。しかし2周目に入った「真の探究」者のプレゼンはどこかもやもやしている。探究に終わりがないことを体感しているから、「まだまだやりきれてない」という途中経過報告のようなプレゼンになる。自身のライフワークを語る玄人のように感じさせる。
こうなると、AWARDという形がいよいよナンセンスになる。人のライフワークに対して、大人がとやかく言って点数を付けるなんてヤボでしょう。受賞という外発的な動機の意味は薄れ、AWARDの在り方は問われる。高校、中学という学校の枠を超えて「中高生が地域で探究的に学ぶ真価」の片鱗が見えてきた2023年となった。
(文・加藤拓馬)