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Special2x2Interview 唐中男子×若手漁師[後編]

文:加藤拓馬  写真:奥村浩毅

左から、
小野寺 庄一さん(おのでら・しょういち)
メカジキ突きん棒漁・メカブ養殖の若手漁師。
佐々木 壮登くん(ささき・まさと)
唐桑中学校2年生(当時)。
小野寺 凛くん(おのでら・りん)
唐桑中学校2年生(当時)。
畠山 政也さん(はたけやま・まさや)
牡蠣・ホタテ養殖の若手漁師。通称やっくん。


前編はこちら
 

すっげぇ海が好き

庄一 中学生のときは漁師になりたいって思ってませんでした。
でも、海が好きで小学生のときから船で遊んでました。
うちらのときはそんな厳しくなかったんで、○○獲ったり、○○獲ったり。

それでずっと海が好きだったんだけど、漁師になりたいとは思わなかった。
それで福祉の道を選んで13年。福祉も好きだった。
でも(高台の)職場から海を見ながら、ふと考えた。

おれ、すっげぇ海好きだったなって。

それでまずは休日に海の仕事のお手伝いから始めた。
「やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい」って周りに言われたこともあって、
前職は安定した職業だったんだけど、漁師になった。

後悔はまだしてない。
逆に、海っておもしろいことの方が多い。
養殖と漁船、2種類の漁業を今やってるんで、おもしろい。

 やりがいは何ですか?

庄一 やればやった分、サボればサボった分が返ってくること!

やっくん 確かに。手かけただけ、牡蠣に反映される。
手を加えただけ、実入りのいい牡蠣ができるから。
それがやりがいを感じるところだね。


 

世界の人に「唐桑」を

壮登 将来の夢ってありますか?

やっくん いろんな人に知ってもらえるように牡蠣のブランド力をさらに高めて、
日本全国、世界の人たちに食べてもらいてぇなっていうのが、夢なのかな。

有り難いことに、すでに唐桑の牡蠣っていい評価をもらってるんで、
それをもっと確立させていきたい。

庄一 牡蠣に加え、ホタテもワカメもメカブも美味しい魚もいっぱいあるんで、
「唐桑」というブランドを売っていきたい。

やっくん ですね、漁師には獲ったり作ったりだけではなく
「発信するスキル」もこれから大事になってくるんじゃないかな。


 

漁師のイメージ不足

庄一 漁師の後継者不足って全国的に言われてるけど、唐桑の漁師の高齢化も事実。
養殖の漁場がどんどん空いてくるのも事実。

なんで漁師になりたい人って少ないんだろう。後継者不足ってなんでだろう。

編集部 中学生で漁師になりたい子っている?

唐中生一同 あんまりいない。この2人(凛と壮登)は超貴重。

庄一 うちらの代でも漁師やってんの1人2人だよ。

やっくん おれらの代もおれしかいないっすよ。

庄一 やっぱり「漁師さんのイメージ」がないんだろうね。体験する機会も少ないし。
唐桑小学校の牡蠣養殖の体験くらいじゃない?
正直、おれ中学生のとき漁師さんって何やってっか分かんなかったもん。
親戚がやってない限り知る機会がない。切実な問題だよ。

あと10年したら…極端な話、漁師いなくなるよ。

(気仙沼でも)日本人の乗組員は減ってるし、唐桑の養殖業や漁船漁業も…。
うちらが逆にみんな(唐中生)からアドバイスもらって、PRしていきたい。
「漁師さんが何やってっか、分かんない」が一番の原因だと思うから。
 
 
 

—— 今、地域の次世代が「漁師」を知る機会が少ない、という指摘。
「父は漁師です」が当たり前だった時代が終わってから、漁師は子どもたちから徐々に遠ざかっていった。漁師減少がさらなる漁師減少を生む負のスパイラルはどこで断ち切るのか。

子どもたちが一度は憧れるプロ野球選手やサッカー選手。なぜか。

それは①日々テレビでその活躍を見ていて身近に感じられる②日々自分たちも部活等で楽しんでプレイしているからではないか。
漁師も同様に①日々活躍を発信する②日々体験できる場を創ることで、将来の漁師を育むことができるのかもしれない。
なにせ「漁師ゼロ」を回避するため、地域内への情報発信が問われる。


 

自分の信念に基づいて

—— 苦しさあり、やりがいありの漁師について唐中男子は改めてどう思ったのだろうか。

 漁師にとっては、その仕事の大変さとかも、
自分の生きがいなんじゃないかなって思いました。
今日は、普段学校では奥深くまで聞けないことを聞けてとてもよかったです。

壮登 授業で習ったんですけど「2030年問題」っていうのがあって、
高齢化社会が進んで人も少なくなると、いずれ食べ物もつくれなくなるそうです。

そのことを考えると、(自分が)魚を獲ることで、人のためにもなれると思いました。
これからは将来のことを考えながらいろいろ勉強して活かしていきたいです。

編集部 最後に漁師の2人からメッセージをお願いします。

庄一 将来漁師になりたいっていう気持ちも大切にしてほしいんだけど、
今やれることを精一杯楽しんでほしいな。

この歳にしかできないこともあっぺし…
それが勉強なのか部活なのか、それとも友だちとわいわい遊ぶことなのか。
今をいっぱい楽しんでほしい。
で、漁師になったらなったでいっぱい魚を獲ればいい。

やっくん いろいろな話を聞けてよかった。
最近の中学生っていろいろ知ってるんだなぁって感心しました。
一次産業の将来について考えてることとか、絶対将来実になってくると思う。

大人が応援してます、みなさんを。

チャレンジするってことが大事。なんでも興味をもって。
周りにいろいろ言われても流されないこと。
自分のやりたいことを自分の信念に基づいて突き進んだらいいと思います。

後々、後悔しないようにね。

聞き手:
加藤拓馬(KECKARAけっから。編集部)
伊藤夕妃(唐桑中学校)
吉田葵(唐桑中学校)

KECKARAけっから。編集部
※インタビューは、2016年2月のものです。

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